もうすぐ発表会2022年12月23日

7か月ぶりの投稿です。気を失っていたわけではありません。今年は、何だか忙しい一年だったような…。仕事もコンサートもたくさんやりました、行きました。

そして、今年最後の大仕事、ピアノの発表会が迫っています。25日。まさにクリスマスの日でございます。お年頃の生徒からは「なんでそんな日にやるの?この日はデートする日でしょ⁉」と文句を言われ、かく言う私も、疲れ果てて掃除をできないまま年を越すに違いないと思って恐れおののいています(いつものことかも?)。
こんな日に発表会をやる人はいないかと思いましたが…いました。長野のお友達がやはり同じ日に。この日しかホールが取れなかったそうです。

ということで、今年のプログラムの表紙はこちら


調子に乗って、ウェルカムボードも作っちゃいました。


ステージにクリスマスツリーも飾ります。あまりツリーを飾る人はいませんねぇ、とホールの方に言われました(笑)
クリスマスだからこそできる演出を!

もちろん、演奏のほうもばっちりです(と思いたい)。
楽しいクリスマスにいたしましょう。

別府アルゲリッチ音楽祭2022年05月17日

昨日のオペラシティ のコンサートに行ってきましたー!アルゲリッチの話題が出るたびに「アルゲリッチと同じ誕生日です。」と訳の分からない自慢をしている私です。ちなみに6月5日、もうすぐです。

さてさて、アルゲリッチの演奏はテッパン、シューマンのピアノコンチェルト。一緒に行ったお友達は最初の音から魅了されたようです。私は、カデンツの部分で感極まりました。
そしてミッシャ・マイスキーとのデュオ、幻想曲集Op.73。シューマンがわずか二日間で書いたという家庭向けの室内楽曲。10分に満たないこの曲だけのための出演とは、ミッシャ・マイスキーの無駄遣いじゃないかと思っていたのですが、アンコールのほうが長かった。堪能できて良かった。それにしても、アルゲリッチのアルペジオ、そして半音階のフレーズはなめらかで本当に気持ちいい。ずっと聴いていたい。これだけでご飯が3杯おかわりできます。どういう例えなのか?

アルゲリッチ登場のときは、待ってました!と割れんばかりの(ちょっと耳が痛くなるくらいの)拍手。アンコールの終わりは満足した温かい拍手。拍手も演奏で変化するというのを目の当たりにしました。もちろん私もその中の一人です。

オーケストラは東京音楽大学オーケストラ・アカデミー。今年開講したばかりなのですね。指揮はチョン・ミンでベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」(冒頭のコールアングレが良かった)、ブラームスの交響曲第1番。全体の音のバランスがどうなんだろ?とも思いましたが、それはそれでいつもあまり聴こえてこない音が聴けるのは楽しいものです。

盛りだくさんのプログラム(紹介したのは順不同)。アルゲリッチさん、明日は水戸でその後別府入りでしょうか。熱海にも行くみたいですし、お身体に気をつけて過ごしてほしいです。


映画「つつんで、ひらいて」2022年05月06日

TAMA映画フォーラム特別上映会、ベルブホールにて「つつんで、ひらいて」を観てきました。
先日亡くなった装幀家、菊地信義さんのドキュメンタリーです。

まさに手仕事という言葉がぴったりの仕事っぷり。ハサミで切って糊付けして、じっと眺めて、ミリ単位でずらしてまた眺めて…。あれ?これは、カリグラフィーでも行う作業です。しかし素人には眺めていてもどれが正解なのかわからないので、途中であきらめるのがダメなんだなあ。とことん突き詰める姿勢に職人気質を感じます。

そしてチャレンジャー。夜中に思いついたアイデアを翌朝「良いこと思いついちゃった!」という顔で嬉々として試作する姿。なんか曲作りにも通じます。

「受注仕事の意義は?」の問いかけに「頼まれた仕事だからこそ、パワーが出てくることがある。人間の関係性はみんなそう」というようなことをおっしゃっていて、印象に残りました。

家に帰って、あらゆる本をひっくり返してみました。たぶん、この映画を観た方はそうしていると思う。
音楽の本以外は、建て替えるときに処分しちゃったのであまりなかったのですが、
「ファンダメンタルな楽曲分析入門(沼野雄司著)」が、映画にも出演されていた菊地さんのお弟子さん、水戸部功さんの手によるものでした。なんだかうれしい。


夏も近づく~2022年05月02日

本日は5月2日、八十八夜ですね。

♪夏も近づく 八十八夜
野にも山にも若葉が茂る
あれに見えるは茶摘みじゃないか
あかねだすきに すげのかさ

文部省唱歌「茶摘み」の1番です。
情景が目に浮かぶ良い歌詞ですね~。
2番の冒頭「日より続きの今日このごろを」というのは今年はちょっと当てはまりませんね。
一日おきに雨が降っていますし、

楽しい歌で明るい話題を…と思ったのは、朝からNHKBSの「クラシック俱楽部」でグリゴリー・フリード作曲のモノ・オペラ「アンネの日記」を見て、気分がずどーんとしてしまったから。音楽は色々なスタイルが入っていて面白かったし、ソプラノの天羽明惠さんの演奏は素晴らしかった。

「アンネの日記」は、昔読んだ記憶があるものの詳細までは覚えていません。オペラを観ながら「こんなエピソードあったっけ?」と…。それは、ロシアの快進撃に期待するというような内容。作曲者が
ロシア人だから?作られたのが1969年ということは、この時期のロシアは?今この時期だからこそとても敏感になっており、フリードのことや作曲された経緯などを調べています。

ロシアの音楽を排除(と書くととてもキツイ感じですが…)する、しないで物議を醸しています。大好きな曲もたくさんあるし、私は排除するべきではないと思っています。しかし、今までのように純粋に音楽を楽しめない自分がいるのも事実。音楽を聴きながら考え込んでしまうし、ウクライナの壊れてしまった街を思い浮かべてしまう。
すっきりした気持ちでロシアの音楽を聴くことは当分ないでしょう。

ケージとグリーグ2022年03月25日

ステキなコンサートを体験した夜は幸福感に包まれて眠れるけれど、ひどいコンサート(たまにある)の夜は腹立たしくて眠れない。23日の夜は満足度の高いコンサートで脳が活性化しちゃって眠れず。次の日も疲れが取れなくてblogを書く気になれず。やっと本日感想をまとめる気になりました。

Tomoki Kitamura Real-time vol.3"Cage&Grieg"
北村朋幹ピアノ・リサイタル 
2022年3月23日(水)
ムジカーザ

本来なら昨年のクリスマス・イブに行わる予定がコロナ禍で延期。待ち遠しかったコンサートです。

14:00~ジョン・ケージ:プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード
グランドピアノの弦の間にネジやゴムなど様々な材料をを挟んで演奏するプリペアド・ピアノ。その材料の特徴に応じて、音の響きを変化させることができます。どこの弦の、ダンパーから何インチのところに、何を挟むかの図表が楽譜の最初に示してあります。ネジとかボルト(小さいボルトとか家具用のボルトとか細かく指定!)とかゴムとか消しゴムとか。ん?図表を見ると、消しゴムは製品まで指定してあります。今回は?指定の消しゴムを使ったのかしら…。知っていたらもっとよくピアノの中を見たのに。見てもわからないか…。開演までは、材料を挟んである状態をのぞき込むことができ、みなさん興味津々でした。もちろん私も。残念なことに撮影禁止でしたけれど。

ピアノを囲む座席配置でしたので、低音部後方の席で鑑賞。楽譜も、指も、ペダルも見えて面白さが倍増だったように思います。
どんな音かと言いますと、ガムランのような音や、お寺の鐘(ほど響かないけれど)の音や、アルミの鍋の蓋を菜箸で叩いたような音がします。家に帰ったら鍋の蓋を叩きたい衝動に駆られたけれど、我が家にはもうアルミの蓋はありませんでした…。あと、ピアノの枠の木の音も聞こえます。
高音部分で硬質の音で細かいパッセージが奏でられたり、中低音部はもそもそした音が散発したり。低音の「レ」の鍵盤の材料は、例の消しゴムでした。私の想像では、木魚より一回り大きい形の楽器。木ではなく金属。中は空洞じゃなくて布が入っている。それをフェルトのマレットで叩く。そんなイメージが脳内を駆け巡ります。
そんな音たちの中に、ときどきピアノ本来の音が現れます。当たり前の音のはずなのにかえって「ドキッ!」とします。新鮮。
今まで、無機質な音楽のように感じていましたが、全然そんなことはなく、音楽を深く感じることができたのは、演奏者の力量によるところが大きいのでしょう。

終演から夜の部までの時間、友人と二人、大いに語り合いました。

そして、
19:00~グリーグ:《抒情小曲集》より
「この曲集しか演奏しないプログラムってどうなの?普通は、前菜的に数曲演奏して一度ステージを去り、遅れてきたお客さんを会場に入れて、さあメインディッシュへ!という位置づけじゃないの?」
「この曲集しか演奏しないってことは、どういう選曲構成にするんだろうね?まとめるのって難しそうだよね?」「プログラムに《抒情小曲集》しか書いてないよ。各曲のタイトルはないの~?」
開演前の私たちの会話です。

さて開場。今度は俯瞰できる2階席へ。ふと1階の客席を見ると、北村朋幹さんが友人と談笑してるじゃありませんか。へえ~余裕。私たちも雑談をしていて、あっという間に開演5分前。いつの間にやら北村さん、ピアノに向かっています。楽譜をぱらぱらとめくったり、メモ帳になにやら書いたり。19時、横に置いてあるスタンドの灯りをパチッと点けて、しゃら~んとカデンツを弾いて、何気なく演奏を始めました。

そうか。ここは北村さんのプライベートなお部屋なのね。一人で気の向くまま、小曲集を弾いている設定。そこには前菜もメインディッシュもない、構成を考える必要もない。楽譜をぱらぱらとめくっては、そのときに気が向いた曲を弾いていく。ありますあります、そんな時間。そして、抒情小曲集はそんな時間にぴったりの曲集です。

そうと分かれば、こちらもそれに身を委ねるだけです。「Arietta」「Vals」「Norsk」…。一人芝居の演劇を観に来ているような錯覚に陥りました。言葉はないけれど、音楽は雄弁に語る。もしかしたら意図的な構成もあったのかもしれないけれど、別にわからなくてもいいよね~という気持ちで聴き続け、最後の「Efterklang」が終わり「眠くなったから寝よう」とばかりにスタンドの灯りを消して暗転。終了。

ぜひまた、北村朋幹さんの演奏会に行きたいと思います。